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相続・事業承継Vol.29 国際相続その2 相続人が日本以外の場合 その1

国際相続その2 相続人が日本以外の場合 その1

相続・事業承継Vol.29

 

こんにちは。

 

以前、弊社に御相談に来られた方が、

「オーストリア生まれ、ドイツ育ち、イギリスの大学を出て、

日本にマンションを借りてたことがある、シンガポールに出張している人」でした(たしか…)。

もはやなにがなんだかわかりませんが、今後はこういった方が増えていくのでしょう。

 

今回から3回にわたって、国際相続の実務とその課題をご紹介していきます。

今回は、相続人が日本以外の場合 その1 として、

・相続人が日本以外に居る場合の相続人の特定の方法

・申告納付までの留意点

を中心に見ていきたいと思います。

 

相続の発生 相続人の特定

日本で相続が発生した場合、相続税の申告や相続手続き(銀行や不動産登記など)のために必要とされる公的書類として、

①被相続人の出生から死亡までの戸籍

②相続人の戸籍、印鑑証明や実印、住民票

などが要求されることが一般的です。

②について、相続人が日本以外に居る前提で考えてみます。

(①については次回触れます)

 

戸籍について

相続人が日本の戸籍から抜けている場合(例えば長男が国際結婚をして外国に住み、外国籍になっている場合)を考えてみます。

父が亡くなった場合、相続人である長男が生きていればまだしも、

その相続人である長男がすでに亡くなっており、その孫に代襲相続するとなると、

その孫は本当に代襲相続権のある人かどうか?、という壁にぶつかります。

(私たちも、日本の公的機関や金融機関もです)

 

このような場合には、「抜けるまでの日本の戸籍」や

「それらしい書面を作って、宣誓、サインをして、公的機関(大使館や公証人役場など)の認証を受ける」

などの対応で代替することになります。

 

印鑑証明や実印、住民票について

世界ではサインが一般的ですので「サイン証明」というものを公的機関で取得して、それをもって代替します。

住民票についても、そういった制度がその国にあればいいですが、なければ在留証明を取得するなどして、代替します。

 

サイン証明や在留証明については、海外に住まれるような方であれば問題なく取得できると思いますが、

戸籍に代替するような書類はあまり取得されないと思います。

事前に、あるいはその時が来たらスムーズに現地の専門家と連携がとれるように準備しておくといいと思います。

 

申告納付までの留意点 

納税管理人

必要なのは、各種手続きのために書類を集めるだけではありません。

相続人が日本以外に居る場合には、相続税の申告納付について、納税管理人を置く必要があります。

納税管理人とは、“日本国外にいる人に代わって、日本の税金に関する手続き(書類や連絡のやりとり、税金の納付や還付など)を行う人”で、

一般的には日本に住んでいる親族や会社、会計事務所がなることがあります。

なお、税金の納付方法は、金融機関から税務署に送金することが一般的ですが、

この時、海外の相続人が日本に口座を持っていればその口座から納付し、

持っていなければ納税管理人の日本の口座に送金したうえで、そこから納付するなどの方法を取ります。

 

居住地国での課税と外国税額控除

日本での相続税に関する手続き面での留意点は上記のようなものですが、

他にも相続人が住んでいる国での問題と、国同士の問題があります。

 

日本のルールによって、国外にある財産に日本の相続税が課税されたり、

外国にいる相続人に日本から課税されたりするように、

相続人が住んでいる国の相続税等のルールがあります。

 

例えば、とあるX国のルールで

X国に住んでいる人が相続で取得した世界中の財産に課税する」となっていたり、

X国にある財産については、世界中のだれが相続で取得しても課税する」というような場合、

X国での相続税の申告、納付が必要になったりします。

 

また、日本でも相続税が課税される場合には、二重課税の状態になり、外国税額控除という制度を使う場面が出てきます。

 

このような場合、日本の税理士、日本の弁護士等の専門家と相談することも非常に重要ですが、

X国での取り扱いがどうなるかはX国の専門家との連携、業務依頼が必要です。

国際関係に強い日本の専門家だとしても、タイムリーのX国の法律、税務に精通できているとは限らず、

最終的にはX国の専門家に確認を取るなどの対応になると思います。

 

信頼できる世界の専門家とコネクションがある日本の専門家に相談することが望ましいと思います。

 

次回

次回は、相続人が日本以外の場合 その2 & 被相続人が日本以外の場合

として、国外転出時課税、プロベートなどと、今回飛ばした被相続人の戸籍の問題を中心に見ていきます。