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相続・事業承継Vol.53 資産管理会社の活用(応用編その4)~個人から法人へ~

資産管理会社の活用(応用編その4)
~個人から法人へ~

相続・事業承継Vol.53

こんにちは。SUパートナーズ税理士法人の宮崎です。

 

前回のSUレター(相続事業承継Vol.52)で紹介した資産管理会社の活用法の続きです。前回のSUレターでは、個人オーナーの所得を不動産管理会社に移転させるための方法として、最も所得移転ができる方式 不動産所有方式 の留意点9 借地権の問題をクリアしましょう を説明しました。今回はその続きになります。

まずは、復習として前回の記事を再掲します。

留意点9 借地権の問題をクリアしましょう

土地が個人、建物が法人の場合、借地権の認定課税の問題があります。

<借地権の認定課税とは>

 借地借家法により借地人には強い権利があります。反対に、地主には、将来の地代の改訂が困難だったり、借地人からの契約更新の申し出に拒否することが制限されたりします。これらの経済的な不利益を回避するために、権利金を授受することが慣行化されています。

権利金を授受しない場合、贈与とみなされ「権利金の認定課税」が行われます。

次に、様々なパターンで課税関係がどうなるか見ていきます。

① 権利金授受なし
② 権利金授受あり
③ 相当の地代方式
④ 無償返還方式
⑤ 使用貸借

以上が前回までの記事ですが、今回は上記のうち②と③を説明します。

<パターン別課税関係>
② 権利金授受あり
 

借地人(不動産管理会社)

地主(個人)

借地権設定時

支払った権利金を資産計上

受け取った権利金の額が

時価の1/2超・・・譲渡所得の収入金額

時価の1/2以下・・・不動産所得の収入金額

地代とその取扱い

通常の地代

損金の額に算入

通常の地代

不動産所得の収入金額に算入

土地の相続税評価額

(株価評価)

自用地評価額×借地権割合

自用地評価額×(1-借地権割合)

 

メリット

・土地が底地の評価となり、相続税評価額が大きく減少する
・他の譲渡所得又は不動産所得が赤字の場合、損益通算が可能

デメリット

・権利金の支払いのために多額の資金が必要
・地主側で権利金が課税対象となる

 

③ 相当の地代方式

権利金を収受することに代えて、相当の地代を収受していれば、権利金の認定課税はありません。これは、通常の権利金を支払う場合と相当の地代を支払う場合とは、経済的実態が同一であるという考えに基づいています。

相当の地代(年額)=土地の更地価額×6%

上記算式の「土地の更地価額」は次のいずれかの価額によることが認められていますが、最低④以上であることが必要とされています。

土地の更地価格(いずれかの価格※④の金額以上)

①通常の取引価額
②公示価格又は標準価格から合理的に算定した価額
③本年の土地の相続税評価額
④本年以前3年間の土地の相続税評価額の平均値

 

相当の地代方式は2つの方法があります。

A.改訂型・・・土地の地価の上昇に応じて相当の地代を改訂する方法

<特徴>

①地代の改訂はおおむね3年ごとで良い

②相続税評価額

借地権:零(借地権価額が発生しないため)

貸宅地:自用地評価額×80%(自由に使用収益することができないことを考慮)

※借地人が地主の同族関係にある同族会社の場合には、同族会社の株価の計算上、自用地評価額の20%相当額が純資産価額に加算される。

 

B.据置型・・・借地権設定時の相当の地代を据え置く方法

<特徴>

①地価上昇時には、自然発生借地権が生じ、借地人に借地権が徐々に帰属していく。この自然発生借地権には、借地権の認定課税は行われない。

②相続税評価額

借地権:自用地評価額×借地権割合×{1-(実際の地代-通常の地代)÷(相当の地代-通常の地代)}・・・A

貸宅地:自用地評価額-A

※借地人が地主の同族関係にある同族会社の場合には、同族会社の株価の計算上、Aの価額が純資産価額に加算される。

 

<要件>

1.土地の賃貸借契約書にいずれの方法を選択したか記載する
2.「相当の地代の改定方法に関する届出書」を税務署に提出する

届出がない場合、「据置型」を選択したものとみなされる

メリット

・地主が不動産管理会社の役員となることができない幼少の子のため、役員給与での所得移転ができない場合は、相当の地代により所得を移転することができる。
・土地の価額が将来上昇すると見込まれる場合は、「据置型」を選択すれば、地価上昇の値上がり益分を移転できる

デメリット

・「据置型」を採用した場合、地価下落時においては、地代が高額となっている部分が不相当に高額とみなされ、役員給与の損金不算入の可能性がある
・一般的には、相当の地代の額が多額になるため、地主側の税負担が大きくなる