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相続・事業承継Vol.16 医療法人の出資持分

医療法人の出資持分

相続・事業承継Vol.16

 

こんにちは。SUパートナーズ税理士法人の乾です。

時間がたつのは早いもので、もう2月ですね。

税理士業界は繁忙期まっただ中でございます。

12月決算の法人の申告と中旬以降は個人の所得税確定申告

と次から次へと仕事が来る目まぐるしい日々です。

 

この時期はキッチンにお菓子をたーーくさん置きます。

私も従業員さんも残業が多くストレスもたまるのでお菓子をちょこちょこ食べて、

糖分を取って仕事を頑張るという感じです。

太っていたらそういうことか・・・と、そっとしておいてください!

 

さて、それでは今週のSUレターです。

 

非上場株式の話をすることも多いのですが、最近お医者さんのご相談も多いです。

もっともな話です。お医者さんも事業承継の時期に来ているのですね。

 

今月は医療法人の出資についてです。

 

医療法人とは

医療法人は会社法の法人とは異なり、医療法により設立された法人です。

 

社団医療法人には、持分ありと持分なしがありますが、

現在は持分なしの法人しか作ることができません

 

医療法人の相続での相続財産は…

相続、事業承継で問題となるのは持分のある社団医療法人です。

持分ありの社団医療法人の院長(出資者)に相続が発生した場合、

相続人が取得する財産は、持分払戻請求権なのか、出資持分なのか

どちらなのでしょう?

この二つに違いがあるのか?と言うと、違いはあります

 

払戻請求権の評価方法は…

払戻請求権である場合には、

相続時点における1株あたりの純資産価額で評価されるものと考えられます。

そして、持分の払戻額に対して、所得税法に定めるみなし配当があったものとして、

その配当所得に対する所得税の源泉徴収がされる場合には、

1株当たりの純資産価額から源泉所得税額を控除した後の金額

によって評価されることになります。

ちょっとややこしいことを書きましたが、

要は相続開始時点で精算できる金額というイメージです。

 

出資持分の評価方法は…

一方、出資持分となれば、取引相場のない株式に準じて計算することになります。

詳しくは2ヶ月前のブログをご覧ください。http://supt.hatenablog.com/entry/2017/12/05/083000

 

なお、

払戻請求権=純資産価額評価額>出資持分=取引相場のない株式に準じた評価額

となることが多いといえます。

 

 

 原則は持分払戻請求権となるが…

では医療法人は、どちらなのかというと・・・

原則的には、死亡により退社した場合、モデル定款では、死亡時点で

「社員資格を喪失した者は、その出資額に応じて払戻しを請求することができる」

となっており、相続人は持分払戻請求権を取得したことになる。

 

一定の場合には出資持分となる!

 しかし

相続後に相続人が定款に基づく社員総会において社員と承認され、

持分払戻請求権を行使せず名義変更をした場合には、

出資持分を相続したものと解されます。

つまり、取引相場の無い株式に準じて計算されます。

 

 

 

出資持分の場合の評価の特殊性について

 ただし、医療法人については少し計算方法に注意が必要です。

医療法人は会社法の株式会社などと異なり、

医療法の規定によって剰余金の配当が禁止されています

 

ちなみに配当に類似する下記のような行為を社員(出資者)と行うことは

適切ではないとされています。

1 近隣の相場とかけ離れた賃料での不動産賃貸契約

2 病院等の収入に応じた定率的な賃料契約

3 役員への不当な利益の供与

4 個人又は関係する法人への寄付

 

そのため類似業種比準価額の計算において、配当を考慮しない算式となります。

(1) 180≪類似業種比準価額≫に定める算式

      f:id:supt:20170928174503p:plain
 ただし、上記算式中の「0.7」は、178≪取引相場のない株式の評価上の区分≫に定める中会社に相当する医療法人に対する出資を評価する場合には「0.6」、同項に定める小会社に相当する医療法人に対する出資を評価する場合には「0.5」とする。

 

上記の算式の通り、「利益金額(CやⒸ)」と「純資産価額(DやⒹ)」の2つによって株価が決まります

平成29年税制改正により「利益金額」と「純資産価額」の影響度合いは、

1対1となったため、利益の圧縮による株価対策は、以前よりは効かなくなりました

 

その他留意点としては、取引相場のない株式の評価方法のような配当還元方式はありません

 

この出資持分の評価=評価額を低く抑えられる可能性のある評価

となる根拠資料として、

・医療法人の定款

・相続人が入社を承認された社員総会の議事録

・遺産分割協議書(遺言書)

を、きちんと用意しておかなければ、あとから税務署に

「これは出資持分ではなく持分払戻請求権だ!純資産価額評価だ!」

との指摘を受けて、相続財産が増える可能性もありますよね。

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