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国際税務Vol.66 国外財産調書制度2~ペナルティに10%の差!~

 

国外財産調書制度2~ペナルティに10%の差!~

国際税務Vol.66

 

こんにちは、SUパートナーズ税理士法人の木下です。

今回は個人の国外財産調書がテーマとなります。

以前のSUレター(相続・事業承継Vol.45国外財産調書制度)でもご紹介しましたが、最近の国際税務調査では、この「国外財産調書」のチェックが厳しくなっているようです。万が一、申告漏れを指摘された場合に、この調書を提出しているかどうかで、その後のペナルティに大きな差が出ますので、一緒にポイントを確認していきましょう。

 

国外財産調書の提出義務者

その年の12月31日時点で5,000万円を超える国外財産を有する居住者(非永住者を除く)は、財産の種類や金額などを記載した「国外財産調書」を、翌年6月30日までに提出する必要があります。

 

国外財産とは

財産が「国内」か「国外」かの判断は、相続税法における財産の所在判定に準じて行われます。

国外財産調書(FAQ)で詳しく説明されていますが、いくつか例をあげてみます。

 

預貯金:預けている営業所または事業所の所在がどこにあるかで判断されます。
そのため、国内の銀行で開設した外貨預金口座は、この調書に記載する必要はありません。

有価証券:基本的には発行法人の本店所在地で決まります。ただし、金融商品取引業者等の口座で管理されている場合は、その営業所等の所在地で判断します。

暗号資産・NFT:所有者の住所が日本にあれば国内の財産とみなされるため、この調書への記載は不要です。

 

財産の価額

記載する財産の価額は、12月31日時点の時価または見積価額で算定します。
外貨建て財産は、その日の為替レート(金融機関のTTBなど)を使って日本円に換算します。

 

罰則について

国外財産調書の提出義務を怠った場合や虚偽の記載をして提出した場合には、1年以下の懲役または50万円以下の罰金に処される可能性があります。

過去には、ある家具輸入販売仲介業者が売上を除外して、所得税を免れていた事件で、多額の国外預金を有しているにもかかわらず、国外財産調書を提出していなかったため、罰則が適用された事例もあります。

加算税の特例措置

国外財産調書制度では、提出の適正化を促すため、所得税や相続税に対する加算税等の特例措置が設けられています。

軽減措置:提出期限内に適切に調書が提出され、記載された国外財産に関する申告漏れが生じた場合、その国外財産に係る部分の過少申告加算税等が5%軽減されます。

加重措置:提出期限内に調書の提出がない、または記載すべき財産が未記載だった場合には、その国外財産に係る部分の過少申告加算税等が5%加重されます。

つまり、国外財産調書の適切な提出の有無によって、ペナルティの率に10%もの差が生まれます。

さらに、国外財産に関する書類の提示等を求められたにもかかわらず、正当な理由なく指定された期限までに応じなかった場合は、上記の軽減措置がなくなり、加重措置が5%から10%に引き上げられます。 

 

CRS情報

「そもそも海外の財産なんて分かるの?」とよくご質問をいただきます。CRS(共通報告基準)という国際的な仕組みがあり、参加している国や地域の間で、お互いの国の非居住者の金融口座情報(氏名、住所、口座残高など)を定期的に自動で交換しております。

(CRS情報の詳細は、過去のSUレター参照:国際税務Vol.65 CRSって何?

 

最後に

国税庁の発表によると、令和5事務年度の実地調査では、国外財産調書の提出漏れなどでペナルティが重くなった件数は303件にのぼり、軽減された168件を上回っています。

為替の変動により、ご自身でも気づかないうちに海外資産の円換算額が5,000万円を超え、意図せず申告漏れとなっているケースも少なくないでしょう。

もし「期限を過ぎてしまった…」と気づいても、手遅れではありません。調査の通知が来る前に自主的に提出すれば、ペナルティが軽くなる可能性があります。

まずはご自身の資産状況を今一度ご確認いただき、少しでもご不安な点があれば、どうぞお気軽にご相談ください。