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相続・事業承継Vol.68 相続時に預貯金が0円なら相続税はかからないのか?

相続時の預貯金について

相続・事業承継Vol.68

こんにちは、SUパートナーズ税理士法人の三橋です。(2025年8月寄稿)

 亡くなると預金が引き出せなくなると聞くから、相続税を払うのが大変だから相続対策のために…などの理由から被相続人の亡くなる前後でご家族が資金移動をするケースは多くあります。
 相続財産は被相続人の亡くなった時の財産なので、亡くなった日に預貯金が0なら相続税の対象にならないでしょ!?…と思っておられる方もいるかもしれませんが、そうは問屋が卸しません…いえ、税務署が許しません。

① 生前に継続的に資金を引き出した場合
 被相続人が入院等している場合に、口座管理を任されることは多いと思います。生活費や被相続人の指示に基づき常識の範囲内で引出す場合、被相続人の介護施設・病院への支払のための引出しは問題とされる可能性は低いでしょう。

② 亡くなる直前に引出しをした場合
 預貯金を引出して残高が0になったとしても、財産の内容が預貯金から手許現金に変わっただけですので、相続財産に変わりはありません
 葬儀費用等に充てるため引き出された場合は、葬儀費用は債務控除として相続財産から控除されますので領収書等を必ず保管しておいてください領収書のない僧侶等への支払は日付、金額と相手先のメモを残しておいてください

 高額な資金移動については生前贈与か相続財産か判断が必要となります。
 贈与契約はあげる方ともらう方の双方合意(あげます・もらいます)が必要な契約になりますので、被相続人の合意のない資金移動は贈与とは認められません。被相続人が重度の認知症で判断能力がない場合も、贈与は無効になってしまいます

 なお、相続開始前一定期間内に相続人が受けた贈与については、相続財産に加算して相続税の計算を行います(生前贈与加算)。死亡直前に駆け込みで贈与を行って、相続税を回避することを防止する制度です。贈与時に支払った贈与税額については、相続税申告において精算されます。
 令和5年税制改正により上記一定期間は3年から7年に延長されました。2024年1月1日以降の贈与から2030年末まで段階的に延長され、2031年1月1日の相続から完全に7年になります

③ 亡くなった後に引き出す場合
 金融機関は預金者が亡くなったことがわかると預金者名義の口座を凍結します。凍結を解除するためには遺言書又は遺産分割協議書が必要になりますが、遺産分割前でも各相続人は預貯金の1/3に法定相続分を乗じた金額まで(上限150万円)は引き出すことが出来ます民法909条の2)。
 なお、相続財産の全部または一部を処分したときは、一定の場合を除き単純承認したものとみなされ民法921条、相続放棄はできなくなりますので注意が必要です

 なお、相続税申告を受託させて頂く場合は過去の預金通帳を確認させていただき、多額の出金がある場合は内容の確認をさせて頂きます。場合によってはご家族の通帳も見せて頂きます。なぜ自分の通帳まで!?と抵抗を持たれる方も多いと思いますが、正しく申告をするために必要なことですので、何卒ご理解頂きたいと思います。

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