相続・事業承継Vol.72 自社株の評価額と事業承継~今だからこそ動くべき理由~
自社株の評価額と事業承継~今だからこそ動くべき理由~
相続・事業承継Vol.72
こんにちは。SUパートナーズ税理士法人の宮崎です。
中小・中堅企業のオーナー経営者の方から、「事業承継はそのうちやらなきゃと思っているんですが…」というお話をよくいただきます。
ところが、「そのうち」と先延ばしにしているうちに、自社株の評価額が上がり続け、気がついたら多額の相続税・贈与税が見込まれる状況になっていた、というケースが実際に起きています。
今回は、自社株の評価のしくみと、今のうちに対策を始めるべき理由について整理します。
【非上場株式の評価額はどう決まるのか】
非上場会社の株式は、相続税や贈与税の申告においては「財産評価基本通達」に基づいて評価されます。会社の規模や業種によって異なりますが、多くの中堅企業では「類似業種比準価額」と「純資産価額」を組み合わせて評価します。
類似業種比準価額は、上場している同業他社の株価を参考にして計算されます。つまり、上場企業の株価が高い局面では、非上場会社の評価額も連動して上昇する傾向があります。近年の株式市場の上昇を受けて、自社株の評価額が数年前より大幅に上がっているという会社は少なくありません。
【評価額が高いと何が問題なのか】
自社株の評価額が高いと、後継者が株式を相続・贈与で取得したときにかかる税負担が大きくなります。特に問題になるのは、株式は簡単に換金できないという点です。相続税は原則として現金での一括納付が必要ですが、会社の株式からは直接現金が出てきません。
その結果、相続税を納めるために会社の財産を切り崩したり、金融機関から多額の借り入れをせざるを得なくなったりするケースがあります。事業承継の失敗の多くは、この「納税資金不足」が引き金になっています。
【対策として検討すべき手法】
① 役員退職金の活用
オーナー経営者が役員を退任する際に適正額の退職金を受け取ることで、会社の純資産が減少し、純資産価額方式による株価評価の引き下げにつながります。退職金は法人の損金(経費)に算入できるため、法人税の節税効果も同時に得られます。ただし、退職金の金額が「不相当に高額」と判断されると否認されるリスクがあるため、功績倍率や最終報酬月額を踏まえた適正額の設計が必要です。
② 事業承継税制(特例措置)の活用
非上場株式等についての贈与税・相続税の特例措置(いわゆる事業承継税制)を活用すると、後継者が取得した自社株にかかる贈与税・相続税を最大100%猶予(一定要件のもとで免除)することができます。
この特例措置の適用を受けるためには、事前に「特例承継計画」を都道府県に提出することが必要です。なお、特例承継計画の提出期限や認定要件については、最新の情報をご確認いただくとともに、早めに専門家へご相談されることをお勧めします。
③ 計画的な生前贈与
評価額が比較的低い時期に少しずつ後継者へ株式を贈与しておくことも有効です。ただし、令和5年税制改正により、相続開始前の生前贈与加算期間が3年から7年に延長されました(2024年1月1日以降の贈与から順次延長)。駆け込みの贈与は効果が限定されるため、早期からの計画的な贈与がより一層重要になっています。
【まず自社株の評価額を把握することから】
事業承継の対策は、まず「現在の自社株の評価額がいくらか」を把握することから始まります。評価額によって、最適な対策の組み合わせは変わってきます。「うちの株価はそれほど高くないだろう」と思っていた方が、実際に計算してみると予想以上の金額になっていたというケースは珍しくありません。
後継者への円滑な事業承継のために、ぜひ早めにご相談ください。現状の自社株評価から対策のシミュレーションまで、丁寧にご説明いたします。
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