国際税務Vol.64 個人でも使える?みなし税額控除の活用
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個人でも使える?みなし税額控除の活用
国際税務Vol.64
皆様こんにちは。
普段あまり耳にすることはないかもしれませんが、国際税務に関して外国税額控除という制度があります。日本の居住者や内国法人が稼得した所得は、原則として国内源泉所得だけではなく、国外源泉所得まで含めた全世界所得に対して所得税または法人税が課されることになります。そのため国外での取引等により相手国で課税対象となる所得を有することになった場合、当該居住者または内国法人は、同一の所得に対して日本および相手国の双方で課税を受けることになります。
この二重課税を排除するための制度が外国税額控除です。確定申告において外国で納税した税額を申告することにより、限度額の範囲内で日本の税額から控除することができます。
一方で、現地国において実際には納付していない外国税額を、納付したものとみなして、日本での外国税額控除の計算上控除の対象となる外国税額に含めることができる「みなし外国税額控除制度(タックススペアリングクレジット)」というものがあることをご存知でしょうか。
発展途上国などでは外国からの投資を呼び込むために優遇税制を設けていることがありますが、通常の外国税額控除は現地国で納付した外国税額を日本の所得税や法人税から差し引く制度であるため、外国で稼得した所得について現地国において優遇税制の恩恵を受けても、日本の居住者や内国法人は全世界所得課税なので、最終的に全世界での納税額が減少するわけではありません。
しかしながら、みなし外国税額控除は現地国で納付していないにも関わらず現地国で納付したものとみなして、現地税額相当額を日本の税金から差し引く制度なので、結果として全世界での納税額が減少することになります。
みなし税額控除を適用できる国は限られていますが、その一つがブラジルとなります。ブラジルにおいては海外からの投資を促進するために、ブラジル国債の利子に対する課税は行われていません。この制度は法人だけでなく個人も適用することが可能であるため、ブラジル国債を所有する個人もこの制度の恩恵を受けることができるのです。
例えばブラジル国債に係る利子を10万円受け取る場合、ブラジルでは源泉税率が0%であるため、日本の金融機関を通じて受け取る金額は、日本における源泉税額(100,000×20.315%=20,315円)控除後の79,685円となります。日本における課税はこれで終了しているため、このまま何もしなくても特に問題はありません。
しかしながら、確定申告においてみなし税額控除を適用する場合、外国所得税を20,000円(100,000円×20%)支払ったものみなして計算するため20,000円分の税金の還付と同様の効果があり、結果として、手取りが99,685円となります。
したがって、この制度を知っているか否かによって手取額が変わってしまうのです。確定申告の手間の煩雑さはありますが、恩恵を受ける金額によっては検討してみる価値があるのではないでしょうか。
また、確定申告期限経過後に外国税額控除を失念したことに気づいた場合、更正の請求をして、還付を受けることも可能となります。(期限は法定申告期限から5年以内)
確定申告のシーズンになったら、自分が保有している有価証券について、何かしら税務上有利な点を見落としていないかを確認してみるのもいいかもしれませんね。