国際税務Vol.68 国外オーナーへの家賃支払いと源泉徴収
国外オーナーへの家賃支払いと源泉徴収
~トラブルを未然に防ぐための実務対応~
国際税務Vol.68
こんにちは、SUパートナーズ税理士法人の木下です。
今回は、海外に居住するオーナー(非居住者、外国法人)への家賃支払いがテーマとなります。
昨今は日本企業の海外進出に伴う日本人オーナーの出国や、海外投資家による日本の不動産取得が増加しています。
これに伴い、皆様が借りているオフィスや社宅のオーナーが「実は国外に住んでいる」というケースも珍しくありません。
この場合、家賃の源泉徴収を誤ると、借主である皆様が思わぬ税負担を強いられるリスクがありますので、確認していきましょう。
源泉徴収義務の概要
国内にある不動産の賃借料を非居住者等(海外在住の個人や外国法人)に対して支払う場合、その支払者(借主)には源泉徴収義務が課されています。
※個人が「自己またはその親族の居住用」として借りて支払をしている場合、源泉徴収は不要
税率と納付期限
支払者は、家賃支払額の20.42%(所得税及び復興特別所得税)を源泉徴収し、残額をオーナーへ支払います。源泉徴収した税金は、原則として支払った月の翌月10日までに税務署へ納付する必要があります。
源泉徴収の免除証明書
オーナーが非居住者等であっても、日本国内に恒久的施設(支店や事務所など)を有し一定の要件を満たせば、源泉徴収が免除される特例があります。
免除を受けるためには、借主は、オーナーから税務署発行の「源泉徴収の免除証明書」の提示を受ける必要があります。
税務調査での指摘リスク
実務上、最も注意が必要なのは、これらのルールを知らずに、あるいはオーナーが非居住者等と気づかずに家賃を全額振り込んでしまって、源泉税を納付していない場合です。これは税務調査において、非常に指摘を受けやすい項目です。
調査で源泉徴収漏れを指摘された場合、本来徴収すべきであった税額(源泉税)を納める義務は、オーナーではなく源泉徴収義務者である「借主」にあります。まずは税額(源泉税)を借主側で負担(立替え)しなければなりません。
さらに、不納付加算税(10%等)や延滞税といったペナルティも発生します。
オーナーは更正の請求が必要
借主が税務署へ立替え払いした本税部分は、本来オーナーが負担すべきものです。仮にオーナーが既に確定申告を済ませていた場合、一時的に「オーナーの申告納税」と「借主の源泉税納付」で税金の二重払いが発生しますので、精算手続きが必要となります。具体的な流れとしては、
① 借主が、源泉税を税務署へ納付する。
② 借主が、立替分をオーナーへ請求し回収する。
③ オーナーが、税務署へ「更正の請求」を行い、払い過ぎた(二重払い)税金の還付を受ける。
回収困難なケース
オーナーとしては終わった申告のやり直し(還付手続き)という手間を強いることもあり、「全額受け取って既に使ってしまったから返金できない」「そちらのミスなので、そちらで処理してください」と拒否されるケースもあります。
結果として、立替えした税金を回収できず、借主側が実質的に損失を被って泣き寝入りとなる事例も、少なくありません。
トラブルを防ぐための対策
こうした事態を防ぐためには、契約時やオーナーの出国が決まったタイミングでの事前の確認が不可欠です。
① まずはオーナーに対し、有効な「源泉徴収の免除証明書」を持っているかを確認します。
提示があれば、源泉する必要がないため、全額送金が可能です。
② もし、証明書がない場合は、「日本の法律に基づいて20.42%を源泉して送金します。源泉した金額
は当社が代理して納税します。」旨を明確に伝えることが重要です。あわせて、納税後に「納税証明
書」などを送付することを伝えれば、オーナー側の確定申告にも役立つため、理解を得やすくなり
ます。
最後に、適正な源泉徴収は、皆様だけでなくオーナーをトラブルから守るための大切な備えです。
「今の契約で大丈夫?」「どう説明すればいい?」と迷われた際は、手遅れになる前にお気軽にご相談ください。円満な関係が続くよう、私たちがしっかりサポートいたします。
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