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国際税務Vol.69 米国LLC―タックスブロッカー

米国LLC―タックスブロッカーについて
国際税務Vol.69

 

 

 近年、日本企業が米国事業へ参入する際、米国のLLC(Limited Liability Company)を利用するケースが一般的です。LLCは柔軟なガバナンスと課税方式が選択できることから、海外投資ビークルとして広く活用されてきました。
 しかし、日本のCFC税制(外国子会社合算税制)が改正を重ねるなかで、「米国LLCの所得は日本でどのように取り扱われるのか」という論点は、実務家にとっていまや避けて通れない複雑なテーマとなっています。

 またトランプ大統領による米国の法人税率の低下や米国での共同事業などから、CFC税制の影響を避けるためタックスブロッカーと呼ばれるLLCをかませるケースが多く見受けられます。

 今回は下記の図のようなケースを例にあげて、検討してみたいと思います。

 

   米国のパススルー課税が適用されるLLCを日本のCFC税制の枠組みでどう評価、判定するかが難しいポイントとなっています。

 

【1. 米国のパススルーLLCとは何か?】

 米国のLLC法人形態ではあるものの、税務上は課税主体を“選択”できるという特徴があります。パススルー扱いの場合、パススルーするLLC自体(B)は課税されず、オーナー法人(A)に所得が直接帰属しますForm1065Schedule K1というフォームを通じて所得がIRSに報告される点も特徴です。
 今回の事例の場合、受け取る側のオーナーのLLC(A)は、その受け取った所得をIRSに確定申告し、法人所得税を納付します。

 

【2. 日本のCFC税制ではどう扱われるか】

 日本のCFC税制(いわゆるタックスヘイブン対策税制)は、一定の低税率や受動的所得割合に応じて外国子会社の所得を日本のオーナーの個人や法人の所得に合算課税する制度です。米国LLCのように“法人のようで法人でない”事業体の場合(日本の国税庁は法人とみなす見解を表明しています)、外国関係会社に該当するかどうかが最初の判断ポイントとなります。

 今回の場合は、パススルーを受ける側のLLCについてCFC税制の検討が必要となります。一般的には、低税率判定(30%未満)受動的所得割合実体性などをもとに「特定外国関係会社」に該当するかを判断します。
 今回の場合は、パススルーを受ける側のLLC(A)について租税負担割合および適用対象金額の計算をする場合に、パススルー課税の適用がないものとして検討しなければなりません。

 そうするとペーパーカンパニーに該当するかどうかの判断が必要となり、投資するだけの会社でしたら基本的には該当することになろうかと思います。
 一方で、特定外国関係会社の範囲から除外される中間持ち株会社の特例にかかる要件である、同一本店所在地国に所在する外国子会社の株式等を25%以上かつ6か月以上保有する外国関係会社で、収入割合要件も資産割合要件も満たし特定外国関係会社(ペーパーカンパニー)の範囲から除外される場合は、最終的に経済活動基準を満たさない対象外国関係会社になります。

 そして租税負担割合については、パススルーを受けるLLC(A)はK1で報告される所得は除いて判断するためその他の所得がなければ所得0となり、租税負担割合の判定は“本店所在地国の法定税率”で判定されます。
 連邦法人税率は現在(2025年時点)21%+州法人税率○%の合計で判定することになり、例えば州税率が5%で、Aが特定外国関係会社(ペーパーカンパニー)でしたらCFC税制の適用除外(租税負担割合27%以上)になりませんが、対象外国関係会社として、CFC税制の適用除外(租税負担割合20%以上)になります

 

【3. 所得の帰属時期のズレが本質的な問題】

 米国ではLLCはcheck the box でパススルーを選択すると納税義務者としては透明のように扱い、日本では法人扱いとなるため、

 

米国での課税タイミング 

日本での所得認識タイミング 

CFC税制による“強制合算”のタイミング 

 

が一致しません。これにより、外国税額控除の適用時期が合わなくなるなど、二重課税の可能性も生じます。

 

【4. 実務で特に注意すべき4つのポイント】

 

(1)LLCの課税主体を必ず確認する 

 Form 8832(チェックザボックス)、Schedule K-1の内容は必須チェック事項です。

 

(2)実効税率の計算に注意 

 パススルーLLCは実効税率で評価され、今回のように法定税率の判定のケースもありえます。

 

(3)実体性(サブスタンス)の確保 

 事務所、人員、意思決定の独立性など、実体性が認められるかが基本的なCFC税制回避の鍵です。

 

(4)外国税額控除との整合性 

 所得認識時期のズレは、控除漏れ二重課税につながります。

 

(5)財務諸表等の添付

 CFC税制の適用があるかどうかにかかわらず、外国関係会社の各事業年度の貸借対照表、損益計算書その他の書類を、各事業年度の確定申告書に添付する必要がある可能性があるので、添付対象外かどうかは確認が必要です。

 

【5. まとめ】

 LLCは便利なビークルである一方、日本のCFC税制と組み合わせると税務上の複雑性が格段に増します。所得は誰に帰属するのか、どのタイミングで課税されるのか、判定や課税タイミングや必要な添付書類などを詳細に確認しておくことが重要です。

 

 海外進出を検討する企業や個人にとって、LLCの特性とCFC税制の相互作用を正しく理解することが成功の鍵とリスクのヘッジとなるでしょう。

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