国際税務Vol.70 移転価格:ローカルファイル作成の効率化とAI活用
移転価格:ローカルファイル作成の効率化とAI活用
国際税務Vol.70
皆様こんにちは。
多くの企業にとって、移転価格税制におけるローカルファイルの作成は、毎年発生する大きな負担となっています。特に、取引規模が一定以上の国外関連者取引を行う企業では、取引分析、機能・リスク分析、比較対象企業の選定など、専門性の高い業務が求められます。
外部の専門家に全ての工程を依頼する場合はかなりのコスト負担となり、中小企業はローカルファイルをある程度は内製する必要があるとも聞きます。
国税当局がローカルファイルの整備状況を調査時の重要な確認ポイントとしている中、資料の不備や作成の遅れは、課税リスクの増加にも直結します。近年、こうした課題に対して、AIを活用した効率化が注目を集めています。
ローカルファイル作成において特に工数がかかる項目は、①取引の棚卸し・内容把握 ②機能・リスク分析 ③比較対象企業の検索と選別などがありますが、近年、生成AI、自然言語処理(NLP)・自動化ツールなどを活用することで、ローカルファイル作成の負担は大きく削減できるようになりました。
主な活用領域は以下のとおりです。
① 情報収集・ヒアリング内容の構造化
AIチャットボットを使って担当者へのヒアリングを行い、得られた内容を自動で項目別に整理することで、分析に必要な情報を効率的に収集できます。
② ドキュメントの自動ドラフト作成
既存の過年度ファイルや契約書、社内規程を読み込み、AIがローカルファイルの初稿を生成する技術が普及しています。これにより、担当者はゼロから作成するのではなく、確認・修正に専念でき、作成時間を大幅に削減できます。
③ データの整形や財務指標計算の自動化
独立企業間価格の算定には、適切な比較対象企業を選定し、経済分析を行う必要があります。AIは膨大なデータから類似事例を抽出し、分析をサポートすることで、より客観的で信頼性の高い分析を可能にします。比較可能企業の財務データをAIが抽出し、営業利益率の算出までを自動化することも可能です。
④ 調査対応のQ&A生成
国税からの質問想定をAIが提示し、回答案を生成することで、調査時の準備が格段にスムーズになります。
⑤ 多言語対応
グローバル企業では、各国の税務当局の要請に応じて現地語での文書提出が必要になる場合がありますが、AI翻訳ツールを活用することで、文書の複数言語への対応が容易になります。
ただし、便利さが向上する一方で、以下の点には注意が必要です。
① 機密情報・国外関連者情報の取り扱い
AIツールが社外にデータを送信するタイプの場合、情報漏洩リスクがあるため、適切なセキュリティ対策が施されているか確認が必要です。
➁ AI生成内容の誤りリスク
AIは抽象的な説明や一般的な記述が得意ですが、企業特有の事情を反映しないドラフトになることもあります。最終的なリスク判断や複雑な取引が正確に描写されているか、などについては、引き続き国際税務の専門家による確認が不可欠です。
AI活用の場面において、人間による最終確認は必須ではありますが、ゼロから作成することから開放されることのメリットは多大なものではないでしょうか。取引情報をリアルタイムで取り込み、分析も自動化されれば、海外関連会社管理の透明性が上がり、調査リスクも低減します。ローカルファイルの作成に負担を感じている企業は検討してみるのもいいかもしれません。
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