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相続・事業承継Vol.73 非上場株式の評価方法(配当還元方式)

非上場株式の評価方法(配当還元方式)

相続・事業承継Vol.73

 

 皆さんこんにちは。SUパートナーズ税理士法人の露谷です。

 昨今では、中小企業の社長が年齢を理由に引退を考えるものの、跡継ぎがいないため、業績は良好なのに会社を畳んでしまうという事例を多く見受けます。

 時代の変化や給与・物価の上昇など理由はさまざまですが、その中の一つに「株式の評価額が高くて会社を引き継げない」ということがあります。

 なぜ、株式の評価額が高いと会社を引き継げないのでしょうか。

 現在の日本の税法では、個人が他の個人から価値のある資産を無償で取得すると、「贈与税」という税金を国に納める必要が生じる場合があります。

 また、亡くなった方が所有していた資産を相続人が取得し、相続財産全体の課税価格が基礎控除額を超える場合などには、「相続税」を国に納める必要があります。

 いずれも、その資産の評価額や種類などによって発生する税額は変動しますが、一般的には、価値が高ければ高いほど納める税額も多くなります。

 もちろん、売買をして金銭のやり取りを行えば、そのための現金が必要となります。

 つまり、株式を引き継ぐ方法によって、株式の購入資金や贈与税・相続税の納税資金が必要となり、株式を他人に渡す場合には、多額の現金を用意しなければならないことがあります。

 ただし、一定の要件を満たす場合には、事業承継税制による贈与税・相続税の納税猶予や免除を受けられる可能性もあります。

 とりわけ、中小企業の株式の評価額は多種多様ですが、一般的には、業績が良ければ良いほどその会社の利益や純資産が増加し、株式の評価額も高くなる傾向があります。

 跡継ぎとなる方にできる限り低い価額で株式を渡したいという社長のご意見を伺いますが、これがなかなかうまくいかないというのが現状です。

 その中で、一定の少数株主が株式を取得する場合に、株式の評価額がかなり低くなることのある評価方法の一つを、今回はご紹介させていただきます。

 それが「配当還元方式」というものです。

 

 配当還元方式とは、その名称のとおり、その会社の配当の状況を基に、その会社の株式を評価する方法です。

 原則として、直前期末以前2年間の配当金額を基礎として評価するため、株主に対して支払った配当金額が多ければ評価額は高くなり、配当金額が少なければ評価額は低くなる傾向があります。

 ただし、無配の場合や計算上の配当金額が一定額未満の場合でも、評価額がゼロになるわけではなく、一定の最低額を使用して計算します。

 一般的な「純資産価額方式」や「類似業種比準方式」といった非上場株式の評価方法と比較しても、評価額がかなり低くなることが多いのが、この「配当還元方式」です。

 

 では、すべての会社の株式にこの配当還元方式を適用すればよいではないか、と考える方もいらっしゃると思います。

 しかし、この配当還元方式は自由に選択できる評価方法ではなく、株式を取得する人について一定の条件がそろった場合にのみ適用されます。また、同じ会社の株式であっても、誰が取得するかによって適用される評価方法が異なることがあります。

 その一定の条件とは、その会社に同族株主がいるかどうかによって、それぞれ次の区分で判断されます。

 ここでいう「同族株主」とは、その会社の株主のうち、株主の1人及びその同族関係者が有する議決権の合計が、その会社の議決権総数の30%以上となる場合における、その株主及び同族関係者をいいます。

 ただし、最も多くの議決権を有する株主グループの議決権割合が50%を超える場合には、その50%を超える株主グループに属する株主及び同族関係者が同族株主となります。

 

① その会社に同族株主がいる場合は、次のいずれかの要件を満たす株主が取得した株式

・同族株主以外の株主が取得した株式

・中心的な同族株主がいる会社において、中心的な同族株主以外の同族株主のうち、株式取得後の本人の議決権割合が5%未満であり、かつ、課税時期において会社の役員ではなく、課税時期の翌日から法定申告期限までに役員となる人でもない株主が取得した株式

※「中心的な同族株主」とは、同族株主の1人並びにその株主の配偶者、直系血族、兄弟姉妹、1親等の姻族及びこれらの者と一定の関係にある会社が有する議決権の合計が、その会社の議決権総数の25%以上となる場合における、その株主をいいます。


② その会社に同族株主がいない場合は、次のいずれかの要件を満たす株主が取得した株式

・株主本人及びその同族関係者が有する議決権割合の合計が15%未満となる株主が取得した株式

・中心的な株主がいる会社において、議決権割合が15%以上となる株主グループに属する株主のうち、株式取得後の本人の議決権割合が5%未満であり、かつ、課税時期において会社の役員ではなく、課税時期の翌日から法定申告期限までに役員となる人でもない株主が取得した株式

※「中心的な株主」とは、議決権割合が15%以上となる株主グループのうち、単独でその会社の議決権総数の10%以上の議決権を有する株主をいいます。

 

 このように、配当還元方式を適用できるかどうかは、単純な株式の保有割合だけではなく、同族関係者を含めた株主グループの議決権割合、株式取得後の本人の議決権割合及び役員に該当するかどうかなどによって判定されます。

 配当還元方式は評価額を低く評価できることの多い方法ですが、上記のとおり、議決権割合や役員該当性などによる適用制限が設けられています。

 また、配当還元方式は、経営支配力の乏しい少数株主が取得した株式を評価するための特例的な評価方法です。そのため、後継者が経営権を引き継ぐために多数の株式を取得する場合や、後継者が会社の役員となる場合には、配当還元方式ではなく、純資産価額方式や類似業種比準方式などの原則的な評価方法が適用されることが一般的です。

 もし、非上場株式の評価額について知りたい場合は、会社の財政状態と一緒に、株主の状況、同族関係、議決権の割合及び役員の状況も確認することをおすすめいたします。

 配当還元方式の適用対象となる場合には、株式の評価額が低くなることによって、生前贈与なども視野に入り、スムーズな引継ぎができるかもしれません。

 ただし、配当還元方式は任意に選択できるものではありません。また、株式を著しく低い価額で売買した場合には、時価と売買価額との差額について贈与税が課されることがあります。

 非上場株式の引継ぎを検討する際には、早い段階から専門家に相談し、計画的に進めることをおすすめいたします。

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