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その他Vol.9 保険商品への驚き、再認識 (3)

保険商品への驚き、再認識  (3)

その他Vol.9

 

今回も、引き続き税理士の阿部が担当します。

 

金融商品のとある側面について

銀行の税務に所属していた頃、デリバティブをはじめとする金融商品の税務の取り扱いを検討するに際していつも感じていたことですが、

デリバティブ等の金融商品は、詮じ詰めれば“キャッシュフローの集まりにすぎない”ということです。

それを、典型的な様々な契約に当てはめたり、

様々な条件付けの中で独自の命名をしているのに過ぎないのです。

 

例えば、「預金取引」の命名や課税関係は

例えば、預金取引では、金融機関サイドに立つと、

最初に、預金を預かるキャッシュインフローがあり、これを「預金」と命名します。

次に、預金利子や満期金の払い出しをする際には「利子や預金の払い戻し」と命名します。

また、この「利子」と命名された部分は利子所得と認識され課税対象となるのです。

このようにキャシュアウトフローに名前をつけ、

様々な理由を付けて課税の有無や課税方法を国ごとに取り決めを行っているのです。

預金の利子だけでも、源泉課税だけで完了する場合もある一方、

海外の銀行に預けた利子は、総合課税とされることもあります。

また、預金の利子に課税しない国もあります。

 

キャッシュフロー集まりでしかないが…
このように、本来はキャッシュフローだけでしかないのに、

様々な色付けを行っているのに過ぎないのです。
特にこの事を感じたのは、私が銀行の税務部門に在籍していた当時、

「オプション付き定期預金」の販売に際して、課税関係を課税当局に相談し、

課税の方向性が決まった時でした。

この商品をご存じの方もおられると思いますが、この商品は

・預金者がオプション契約を結び、

・銀行から金利リスクや為替リスクを引き受ける代わりに、

・高額のオプションプレミアムを受領する

というもので、

オプションにより引き受けた「損失が預金元本を棄損させるリスク」の対価として、

高額のオプションプレミアムを受領できるという仕組みです。

オプションにおいては、

「プレミアムを受領したものがリスクテイクして損失を負担する」

か、

「オプションの行使が無ければプレミアムの分が儲かる」

というギャンブル性の高い金融商品です。

この、定期預金に組み込まれたオプションについて、

個人が受領したオプションプレミアムを「預金利子として源泉課税」されることが当局により決定され、

その金融商品は販売されて今日にいたっています。

 

私は、金融商品を見るたびに、本来はキャッシュフローだけであるのに、

そこに経済取引を当てはめて色づける法律、会計、

税務の常識に、“これは一体なんなんだ”と思うことがあるのです。

 

何せ、法人が引き受けたオプションプレミアムは「仮受金」で処理されますが、

個人が引き受けたオプションプレミアムは預金との複合商品となった場合には、

「預金利子」と名前を変えて源泉徴収の対象となるのですから。

 

保険も同じような側面がある

保険についても同様で、 保険商品を学んでみますと、

保険会社が預かるキャッシュインフローを「保険料」と命名し、

支払った側では、時に「保険料控除」の対象となり、法人契約では時に「損金」「預け金」として「資産計上」、また時によって「給与」扱い、などとされるのです。

そして、保険会社が保険事由が発生して支払うキャッシュアウトフローを「保険金」と命名して、課税関係も様々です。

 

まとめ

不動産や商品の譲渡対価として受けとるキャッシュや、

サービスの提供の対価として受けとるキャッシュと異なり、

金融商品は“キャッシュの単なる交換取引”なので、無名性が高く、キャッシュフローを

従来の典型取引に“当てはめて名前を付さなければならない”という法律上、会計上、税務上の要請があるのです。

ですから、保険を含む金融商品の課税関係は、

いつも“これは一体全体「ナンジャラホイ」”という側面を持っているのだと思いますし、

一部の金融マンが、金融商品ごとの法律、会計、税務の適用の首尾一貫性の無さにあきれているのだと想像しています。

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