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その他Vol.8 生命保険商品への驚き、再認識 (2)

生命保険商品への驚き、再認識 (2)

その他Vol.8

 

今回も、税理士の阿部が担当します。

 

生命保険契約自体は、巨額なキャッシュフローの固まりであり、

巨額なコミットメントであるにも関わらず、

保険契約の将来の支払いコミットメントや将来の保険料収入は、

保険会社の貸借対照表に直接記載されることはありません

責任準備金を通じてコミットメントを間接的に貸借対照表に表現することはあっても、

不思議なことに債務の確定した負債と認識されることはありません

 

保険商品は、死亡率や、その裏返しの生存率の予測に基づき、超長期の支払いコミットメントが見積もられます。その誤差を見込んでいるとはいえ、何とも不確実性を含む金融商品です。
 更に、それよりも不確実性が高いのが、20年、30年いやそれ以上の長期の運用の予定利率をコミットメントしていることです。
現在のようなマイナス金利による運用難の状況で、過去に高い予定利率での運用をコミットメントしていた場合、将来のキャシュアウトフローを個別のヘッジが手当てされるような方策を講じていなければ、リスクを抱えることになりますし、低い運用下での魅力ある保険商品の販売は困難となります。
世界中の金融機関や、機関投資家の運用難のなか、保険会社も運用の高度化を行って、支払いコミットメントを履行しなくはならないのです。

保険会社の収益を決める三大要素は、「死亡率」、運用の「予定利率」、オペレイションにかかる費用に関する「事業費率」と言われますが、いずれも長期に渡る不確実性をはらんでいます。

その様な観点から、保険会社は、金利リスクの巨額な固まり、キャッシュフローの長期に渡る固まりと思うと、本当に凄い舵取りが要請されるビジネス経営だと思え、改めて畏敬の念を抱かざるを得ません。
現在、最適の保険商品と思って販売しても、何十年後に支払いコミットメントの履行に苦しむ状況になっているかもしれないからです。

このような事を書いたのは保険会社への不安を書きたてることを目的としているものではありません。どの保険会社もリスク管理が徹底して行われています。ただ、銀行に19年勤めて見・聞きしたキャッシュフローと保険業の取り扱っているキャッシュフローの違いに目をみはらされるものを感じているからです。

それは、個人的な感想で、銀行により異なると思いますが、銀行が金利や為替のリスクヘッジする際、感応度によるデュレイションによるヘッジが中心であったのに比べ、保険会社がキャッシュフローヘッジやVaRも使ってよりリスクに対する感覚が研ぎ澄まされているのにように感じるのです。
 同じ金融機関ではありますが、銀行と保険ではリスクへの取り組みも随分と違うものだと思い始めました。