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相続・事業承継Vol.30 国際相続その3 相続人が日本以外の場合 その2&被相続人が日本以外の場合

国際相続その3 相続人が日本以外の場合 その2 & 被相続人が日本以外の場合

相続・事業承継Vol.30

 

こんにちは。

今回は、前回の続きで国外転出時課税、プロベートと被相続人の戸籍の問題を中心に見ていきます。

 

国外転出時課税

国外転出時課税については、詳しくは過去の記事をご覧いただきたいと思います。

今回、相続・事業承継の観点から気を付けたいのは2点です。

 

①関係ないと思ってた!?  まずは制度を知っておこう!

普段から国外に投資しているような投資家や、国際税務に携わっている税理士などの専門家はこの制度を把握していると思われます。

一方、昔からドメスティックに事業を行う経営者や、その顧問税理士さんの場合、見逃してしまう可能性も有ります。

次の②でも触れていますが、期限が短いことも有り、事前に検討、対策を取っていないと間に合わなくなってしまうかもしれません。

 

②期限は10か月じゃないの?!  4カ月なんです!

期限は4カ月です。相続税のスケジュールとして主なものは、次の通りで、この制度の場合にはまず4カ月が期限となります。

 

3カ月以内:相続放棄の期限

4カ月以内:被相続人の準確定申告期限←ココが期限

10カ月以内:相続税の申告期限←ココばかり意識しがち

 

後継者や株式の取得者があいまいなまま相続が始まってしまった場合であっても、

4カ月以内に株式について遺産分割を完了させないと、法定相続分で相続人が共有状態になり、

この制度の対象となってしまいます。

 

対策として

株式に関してだけは、この制度を先に認識して、

外国に住んでいる方以外が取得する旨の分割協議を部分的にでも完成させることが良いと思います。

※納税猶予制度や更正の請求を活用し、負担が無いようにする方法もあります。

 

プロベート

世界には、

大まかに英米法の国(イギリス、アメリカ、オーストラリア、シンガポールなど)と

大陸法の国(イギリス以外の欧州など)

があります。

英米法の国における相続や不動産の考え方の一つで、やっかい(?)なのがこのプロベートです。

プロベートとは、ざっくりいえば、

“相続が発生した場合「裁判所の検認手続き」というものを経た後で、財産が相続人に行き届く制度”で、

相当な費用と期間がかかってしまうものです。

このプロベートに関わらず日本の相続税の申告期限は10カ月ですので、

場合によっては、プロベート中に納税までも起きてしまい、弁護士費用も捻出しなければいけないなど、

かなりの負担になることもあります。

 

対策として

一般的にはプロベートにひっかからないように、合有や信託、法人を使って国外財産を所有する方法があります。

ただ、(更に混乱させてしまうかもしれませんが)プロベートもより簡便的な手続きに変更されていたり、

国によって煩雑さなどが変わるので、これも一概に言えません。

とにかく生前に、亡くなった場合の取り扱いについて確認して対応を検討しておきましょう

 

 

被相続人の戸籍の問題

被相続人が日本以外の場合、前回前回のリンク)飛ばした被相続人の戸籍問題にぶつかります。

なお、ここでいう「日本以外」とは、日本以外で出生したり、居住していたりして、日本の戸籍ですべてをカバーできない状態を指します。

まず、「戸籍」とは、身分や親族関係が記された公的な書類で、世界でこの戸籍制度を採用している国はかなり限られるそうです。

したがって、被相続人が日本以外の場合、相続手続きにも相続税の申告にも必須な「被相続人の出生から死亡までの戸籍」が無いことになります。

 

対策として

国や日本以外に居るときの年齢などによって様々なため、結論をいってしまえば「ケースバイケース」です。

基本的には、家庭裁判所に相談するなどし、何らかの公的な形で「誰が誰の相続人か」を証明し、戸籍に代替することになります。

おそらくそのために、戸籍制度、戸籍制度に近い制度があればその類の公的書類、宣誓供述書などを作成、取得していくことになるでしょう。

 

まとめ

今回までで一通りの“手続き面”のご紹介が終わりとなりますが、いかがでしょうか?

ご紹介しきれなかった信託の問題、遺言の問題など、他にもいろいろと通常とは異なることが多くありますが、

実際にはなんとかなるものです。

 

ただし、時間や手間は確実に比較的かかりますので、

「知っておくこと」

「事前に準備しておくこと」

が非常に重要です。

次回は、「財産が日本以外の場合」 と題して、より相続“税”にフォーカスして、独特の取り扱いや相続税の評価を中心に見ていきます。