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相続・事業承継Vol.34 財産を守る!民事信託  -事業承継編-

財産を守る!民事信託  -事業承継編-

相続・事業承継Vol.34

 

 

皆様こんにちは。

SUパートナーズ税理士法人の乾です。

企業の事業承継が喫緊の課題となり、2018年には納税猶予の特例が作られました。

メリット、デメリットがあるため検討している企業様も多いのが現状です。

適用を受けるためには、2023年3月31日までに承継計画書を都道府県に提出しなければなりません

自社株式に対する贈与税、相続税の税額が0円となり猶予されるため利用を積極的に考える方もいれば、

株式を死ぬまでは保持したいため使わないという方も案外いらっしゃいます。

税金だけでは決められない、承継させる側の承継の考え方や気持ちと税金が複雑に絡み合う世界です。

簡単ではありません。

 

事業承継における民事信託

事業承継のひとつの手段としても、民事信託が使えます。

ただし、節税手法ではありませんので、別途相続対策は行ってください。

 

承継させる側は、長年社長として経営手腕をふるってきたため、後継者とは経営の経験値が違います。

従って、後継者が引き継いで経営できるのか心配するのは仕方のないことです。

そのため早々に株式まで渡してしまうことに抵抗を覚えることもあるのでしょう。

一方、言葉には出ませんが権利を失うことの恐れや寂しさもあるのだと思います。

 

そういったことから、

死ぬまで又は判断能力が低下するまでは自分が株式を過半数保有して承継者の経営手腕を見守りたい、

場合によっては承継者の交代もありえる

と言う場合、複数人の後継者候補がいるため決められない場合などがあります。

 

そのようなニーズには、民事信託はピタリと当てはまります。

 

死ぬまでは株式を持ちたいが・・・

例えば、

息子に経営自体は任せるつもりだが「会社は自分の子供同様」であり、

「生きがい」でもあるため何かあるときには株主として議決権を行使したい、

という方は経営者に多いでしょう。

この様な方を例にとって考えてみましょう。

 

父(委託者兼受益者)が持つ株式(信託財産)を息子(受託者)に信託します

 

株式の名義は息子になりますが、

株式の議決権を行使するための指図権を父に持たせることにより

父が健康なうちは経営を見守り、判断能力の低下時には指図権が息子になるよう設定しておけば、

いざという時も安心です。

 

また父の相続時には息子に指図権、受益権が移るように設定もできます。

遺言と同じ効果が得られ、財産分割協議による経営のタイムラグがおこらないようにも出来るのです。

遺言でも良いのですが、遺言は書き換えられるため、

判断能力が低下したときにそばに居る他の家族が書き換えを勧めるケースもありトラブルが絶えません。

結果として、本人の意思に反する結果となる場合もあります。

 

他のメリットとして

受益者を変更することができる受益者指定権を委託者に設定しておくことにより、

議決権は父に残したまま、配当などを受け取る受益権を息子に

贈与又は譲渡していくこともできます。

配当などの受益権を息子にうつしながら、

議決権は維持するという通常相反することが出来てしまうのです。

信託のすごいところは、このように株式の財産的価値(配当受領権や残余財産請求権)と議決権を分けて別々の人に持たせることが出来るという特徴があります。

 

上記のように活用出来ることはお分かり頂けたと思うのですが、

導入にあたり承継者以外の人の遺留分への配慮、受託者の選定、

受益権の移動に対する税務などについては、充分な検討が必要です。

 

専門家によるサポートもコストはかかりますが、目的を果たすための必要経費と考えてください。

目先の費用をケチって本来の目的を果たせないのでは本末転倒ですよね。

(民事信託の基本的なメリット、デメリットは基礎編をご参照ください)