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国際税務Vol.35 CRSの初回の状況~厳しい税務調査が始まる!?~

CRSの初回状況

国際税務Vol.35

~厳しい税務調査が始まる!?~

 

皆様こんにちは。SUパートナーズ税理士法人の宮崎です。

海外に金融口座を持つ方は非常に気になる制度、「CRS」をご存知でしょうか。

過去のSUレターでも触れましたが(⇒国際税務Vol.10 「国際租税網CRSで丸裸!?」)

簡単に言いますと、

税務当局が海外の金融口座情報を自動的に入手できる」という制度です。

2019年10月に初回の金融口座情報が国税庁に報告されました。

どのような内容か、また、今後の税務調査への影響を考察します。

 

 

 

CRSとは

CRSは、Common Reporting Standardの略で、日本語では「共通報告基準」と訳します。

CRSによって、日本の居住者が海外に持つ金融機関の口座情報について、毎年12月31日時点の情報が国税庁に提供されます。もちろん、一方的に日本に提供されるのではなく、日本の非居住者が持つ国内の金融口座情報も海外の税務当局に提供されます。

なお、提供される金融口座情報の内容は、下記になります。

・口座保有者の氏名

・住所

・納税者番号

・居住地国

・口座残高や利子・配当等の年間受取総額等の情報

 

これにより,国外財産調書の未提出者等や国外口座に係る利子・配当等の収入金額の把握が容易になるといわれています。

 

CRSの初回交換の状況は?

初回となる2018年12月31日時点の金融口座情報が2019年10月までに交換されました。国税庁は、その初回交換の件数等をホームページに掲載しています。

国税庁は、日本の居住者に係る金融口座情報について,64か国・地域から550,705件を受領しました。

その一方、日本の非居住者の金融口座情報については,58か国・地域に89,672件提供しました。

 

今後の税務調査はどうなる?

今回の情報交換に際して、国税庁は下記のプレスリリースを行っています。

「受領した金融口座情報は、国外送金等調書、国外財産調書、財産債務調書、その他既に保有している様々な情報と併せて分析します。

国税庁は、これらの分析を通じて、海外への資産隠しや国際的租税回避行為をはじめとした様々な課税上の問題点を幅広く的確に把握し、適切に対応していきます。」

 

要するに、情報交換で取得した金融口座情報に基づき、未申告者へ厳しい税務調査をしますよということです。

税務当局は、日本居住者が海外に持つ銀行口座や証券口座を自動的に入手することができます。その情報を、提出済みの確定申告書と照合し、海外の利子や配当の記載が無ければ、すぐに税務調査という流れになるでしょう。

 

アメリカはタックスヘイブン?

CRSは、100以上の国・地域が参加しています。その中には、ケイマン、BVI、パナマ、シンガポール、香港などの有名なタックスヘイブン地域も含まれています。

ただ、先進国のリーダーたるアメリカはCRSの枠組みに参加していません。

彼の大統領が、Make America Great Again(アメリカ合衆国を再び偉大な国に)と演説していましたが、アメリカの力を強固にするために情報を他国に出さない政策なのでしょうか。

前述の有名なタックスヘイブン地域が、世界の厳しい非難により金融口座情報を提供しているにもかかわらずです。ある意味、アメリカという国の偉大さを感じます。

その結果、いいことなのか悪いことなのか、日本居住者が保有するアメリカの金融口座情報は、日本の税務当局に自動的には報告はされません。

 

適正な申告を!

既に、国外財産調書の提出や適正な確定申告をしている方には何ら問題ありません。実は海外に金融口座を持っていて未申告な所得があるという方は、厳しい税務調査が入る前に、早急に適正な申告をしたほうがいいでしょう。