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国際税務Vol.44 外国上場株式の取扱い

外国上場株式の取扱い

国際税務Vol.44

こんにちは。SUパートナーズ税理士法人の木下です。

今回は外国上場株式に関連する所得税についてです。

日本の証券会社でも外国証券取引所の上場株式の売買が簡単にできるため、投資先のひとつとして考えられている方も多いかと思われます。

また、お客様の中には日本の証券会社ではなく、外国の証券会社を利用して株式に投資されている方もいらっしゃいます。

証券会社を通じて外国の上場株式の投資をする場合、日本の上場株式と税金の取り扱いが異なるのでしょうか?確認していきたいと思います。

(今回は、発行済株式の総数等の3%以上を保有する大口株主等は想定しておりません。)

 

 

配当を受け取った場合

基本的には、日本の上場株式の配当と同じ取り扱いとなります。

配当を受ける際に20.315%(所得税等15.315%、住民税5%)の税金が源泉徴収されます。また、日本の源泉税のほか、外国の税金が源泉徴収されます。

例えば、米国の場合には10%日米租税条約を適用した場合)の源泉税が発生します。

このままですと日本と外国それぞれで税金が取られてしまいますが、後述の外国税額控除の適用により、この二重課税の問題は解消されます。

 

配当の確定申告

確定申告の際に配当所得として、給与所得などと合算(総合課税)したものに累進税率(5.105%~45.945%)を掛けて、税額が計算されます。

そこから源泉所得税等(15.315%)や外国税額控除を差し引いた残額を納付します。(住民税は別途、10%の税率で計算されます。)

なお、日本の上場株式と違い、配当所得の10%(又は5%)を税額から控除できる配当控除の適用はありません

 

 

課税の特例

総合課税に代えて、15.315%の税率で計算をする方法(申告分離課税)を選択できます。(住民税は5%の税率)

また、すでに同じ税率で源泉税が取られておりますので、わざわざ確定申告をしない申告不要制度を選択することもできます。

ただし、申告不要にしますと外国税額控除が適用できず、不利になる場合が多いです。

 

国内の証券会社等を経由しない場合の配当

直接、外国にある証券会社等で外国の上場株式等を保有する場合には、注意が必要です。

日本国内の証券会社などの金融商品取引業者等を経由していないため、日本の源泉税が徴収されておらず、申告不要を選択することができません

注意点として、確定申告からもれていた配当について期限後に修正申告を行う場合、申告分離課税は選択できません

申告分離課税の選択は期限内に行う必要があるためです。結果、総合課税での修正申告となり、累進税率によって多額の税金が掛かってしまうケースもあります。

 

 

株式を売却した場合

基本的に日本の上場株式等と同じで、上場株式等に係る譲渡所得等(申告分離課税)として株式の売却益に対し20.315%(所得税等15.315%、住民税5%)の税金が課税されます。

また、売却益に対して外国の税金が発生することもあります。
日本において、源泉徴収ありの特定口座を選択している場合には、源泉徴収だけで

課税が完結し、申告不要にもできます。

ただし、売却損の場合には、申告分離課税を選択した上場株式等の配当等と相殺することができますので、申告した方が有利となる可能性もあります。

また、相殺しきれない場合には、3年間の繰越控除が認められます。

 

国内の証券会社等を経由しない場合の売却

国内の金融商品取引業者等を通じて売買を行っていないため、上場株式の売却損を上場株式等の配当等と相殺ができません。また、3年間の繰越控除の適用も認められておりません

 

外国税額控除

日本と外国で同じ所得に対して税金が課された場合、外国税額控除の適用があります。

基本的には、次の金額を限度として、外国で課税された税金を日本の税金から控除することができます。

控除限度額=その年分の所得税額×(その年分の調整国外所得金額/その年分の所得総額)

具体例として、所得総額200円、所得税額が40円で

そのうち外国配当100円、日本の源泉税20円、外国の税金10円の場合で考えますと

40円×(100円/200円)=20円

外国の税金10円が控除限度額20円よりも小さいため、10円が外国税額控除額となります。

外国税額控除後の配当に対する日本の税金は10円(20円ー10円)、外国の税金は10円となり、二重課税が回避されます。

注意点として、外国税額控除の対象となる税金は、租税条約が適用された場合の税金です。例えば、租税条約によって10%の課税で済むものが、届出不備などにより誤って20%で課税されていた場合でも、外国税額控除の対象となるのは10%部分のみです。

その場合、10%を超える部分は日本の申告で取り戻すことができず、外国で租税条約の届出及び還付手続きを行う必要があります。