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相続・事業承継Vol.56 タワーマンション節税の封じ込め

タワーマンション節税の封じ込め

相続・事業承継Vol.56

こんにちは。SUパートナーズ税理士法人の宮崎です。

2023年10月に、国税庁はマンションの相続税評価額についての通達改正を行いました。これは、マンションの相続税評価額と市場価額に大幅な差があることに着目したマンション節税を封じ込める目的があるとされています。

この改正は2024年1月1日以降の相続・贈与に適用されます。

まず、現行のマンションの相続税評価の方法を見ていきます。

マンション(一室)の相続税評価額(自用の場合)
= 区分所有建物の価額(①)+敷地の価額(②)

① 区分所有建物の価額
= 建物の固定資産税評価額 × 1.0

② 敷地の価額
= 敷地全体の路線価等の価額 × 共有持分(敷地権割合)

上記計算式で相続税評価しますと、都心部のタワーマンションは、市場価額の半分以下の価額で相続税評価できる現象が多くみられました。そのため、現金で保有するよりも、マンションを購入することで相続税が節税になることから、節税目的のマンション購入も幅広く見られたところでした。

しかし、近年、相続税の税務調査において、相続税評価額ではなく鑑定価格等に評価し直して課税処分をされるというケースも発生していました。

また、2022年4月に最高裁判決において国側の評価が勝訴したことにより、マンション節税の機運が一気に萎んでいきました。

そのような中で、令和5年度税制改正大綱において、「相続税におけるマンションの評価方法については、相続税法の時価主義の下、市場価格との乖離の実態を踏まえ、適正化を検討する。」と記載された流れで、今回の通達改正に至りました。

それでは、改正後の評価方法を見ていきましょう。

マンション(一室)の相続税評価額(自用の場合)
= 区分所有建物の価額(①)+敷地の価額(②)

① 区分所有建物の価額
= 建物の固定資産税評価額 × 1.0×区分所有補正率

② 敷地の価額
= 敷地全体の路線価等の価額 × 共有持分(敷地権割合)×区分所有補正率

建物及び敷地共に区分所有補正率を新たに乗ずる必要があります。

区分所有補正率は、下記の計算により算出した評価乖離率を基に、1÷評価乖離率が0.6未満の場合、評価乖離率×0.6を区分所有補正率とします。

(算式)
評価乖離率=A+B+C+D+3.220

「A」=建物の築年数×△0.033
「B」=建物の総階数指数(総階数÷33)×0.239
「C」=専有部分の所在階×0.018
「D」=敷地持分狭小度(土地全体の面積÷専有部分の面積)×△1.195

その結果、1÷評価乖離率が0.6未満の場合、相続税評価額が引き上げられる結果となります。
(なお、1÷評価乖離率が1超の場合は、相続税評価額が引き下げられる調整計算があります)

計算が複雑ですが、簡略化しますと、築年数が浅く、建物自体が高層で、所有階も高層階などのマンションは、従来よりも評価額が増加する結果になります。

今回の改正の結果、相続税評価額と市場価額がどんなに乖離していても、相続税評価額は市場価額の6割以下とならないことになります。

ただ、改正があったとしても、現金で保有するよりは節税効果は残ることにはなります。

この改正により、税務調査において、通達を無視した鑑定価格での評価を強制される等の法的安定性に反することが、今後は起きないことを期待します。