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国際税務Vol.56 米国の税制 ~米国が世界で一番恐ろしい国~

米国の税制~米国が世界で一番恐ろしい国~

 

国際税務Vol.56

 

こんにちは。SUパートナーズ税理士法人の乾です。

税理士はもちろんですが、日本の税制に詳しい方は「日本は全世界所得課税」だとご存じかと思います。しかし、一般の方はご存じありません。そのため弊社でも「海外の不動産を賃貸しているのだけれど、日本で申告する必要がないと思っていました」とご相談いただくケースがございます。

全世界所得課税は米国も同じと言いますか、さらにひどいと言いますか。。。

 

米国は世界のどこに居ようと逃さない

日本人は例えば海外の子会社に出向するなど、1年以上国外に出国することになれば基本的には出国時から非居住者となり、国内源泉所得以外は日本において申告する必要はありませんから、その出国先の国において納税すれば済みます。もちろん日本に不動産を保有していて、その不動産から賃貸収入を得るなどしていれば日本の所得税の確定申告をする必要はあります。

 一方、米国市民権又はグリーンカードを保有している方は、世界のどこに住んでいても米国に必ず申告する義務があります。そのため例えば日本に住んでいて日本でしか所得がなくても米国に申告しなければいけないということになります。
 例え日本でサラリーマンしていようが、英会話の講師をしていようが、日本で不動産投資をしていようが全て米国に申告せよ!ということになります。なんと面倒くさい国でしょうか。たとえ米国での所得がなくても申告義務があるのです。申告漏れはペナルティーが課せられる可能性があります。

Foreign Earned Income Exclusion

 申告の義務はあるが、二重に課税されるかと言えば一定の控除制度があります。
毎年インフレなどを考慮されて変わるのですが2023年は$120,000、今年は円安も大きく影響していますから1700~1800万円まで控除があります。
 この控除を超える所得があり、日本の税額を上回る米国の税額があれば米国においても納税が発生するということになります。

参考にIRSの該当サイトを添付しておきます。
https://www.irs.gov/individuals/international-taxpayers/foreign-earned-income-exclusion

※私どもは米国の会計士・税理士ではありませんから、個別具体的な米国税制の取扱いは米国の専門家にご相談ください。米国税制についての一切の責任は負えません。

日本側では、日本のみの所得でしたら特段気をつけることはありませんが、非永住者以外の居住者であって日本以外に米国でも所得が発生している場合については、全世界所得課税となりますから、米国での所得をもれなく申告したうえで外国税額控除などの手続きが必要となってきます。この米国との外国税額控除も一筋縄ではいきませんが、ここでは割愛させていただきます。

国外金融資産の報告

そのほか所得に関係はありませんが米国外に金融資産を保有している場合は報告義務があります。
 FBAR(Report of Foreign Bank and Financial Accounts)と呼ばれるものです。

参考までにIRSのサイトを添付しておきます。
https://www.irs.gov/businesses/small-businesses-self-employed/report-of-foreign-bank-and-financial-accounts-fbar

$10,000を超える金融資産を国外に保有している場合に、報告する必要があります。素人考えでは報告しなくても所得が発生していなければ、そんなに重い罰はないだろうと考えてしまいがちです。ところが故意に隠したと判断されれば報告していない財産の最大50%を罰金として徴収されると規定されています。恐ろしくないですか⁉

また民事罰のみならず、刑事罰も併課される可能性もあると記載されていますから相当厳しい制度となっています。

 日本においても国外財産調書(国外財産を5,000万円超保有している場合の報告義務です。$10,000と比べたら緩いですよね~)の提出についての罰則は、1年以下の懲役または50万円以下の罰金に処せられることがありますが、これと比較してもFBARは相当厳しい内容となっています。

やはり世界で一番恐ろしい税制の国は米国となります!!以上です。