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国際税務Vol.43  コロナ禍における税務

コロナ禍における税務

国際税務Vol.43

皆様こんにちは。

コロナ禍が長引く中、個人や企業は今まで経験しなかったような事例に遭遇し、その対応にとまどうことも多々あるかと思います。税務についてもいろいろ迷う場面も増えてまいりました。そこで、今回はコロナ禍における国際税務関係の取り扱いについていくつかまとめてみたいと思います。

 

事例1.日本から出国できなくなった場合

外国法人に転職して現地で1年以上勤務する予定であったものの、新型コロナウィルスの世界的拡大に伴い日本から出国することができず、当分の間国内の住所地において外国法人の業務に従事することとなった場合、外国法人から支払われる給与について日本国内における税務上の取り扱いはどのようになるでしょうか。

~一般的な規定~
国内に住所を有し、又は現在まで引き続いて1年以上居所を有する個人は、居住者に該当し、また居住者が勤務先から受け取る給与、賞与などは給与所得に該当し、所得税の課税対象となります。

※日本の所得税法上、「居住者」とは国内に「住所」を有し又は現在まで引き続き1年以上「居所」を有する個人をいい、「居住者」以外の個人を「非居住者」と規定しています。
「住所」は、「個人の生活の本拠」をいい、「生活の本拠」かどうかは「客観的事実によって判定する」ことになります。なお、一定の場合には、その人の住所がどこにあるかを判定するため、職業などを基に「住所の推定」を行うことになります。

したがって、現状コロナ渦によりやむを得ず出国出来ない場合であっても、外国法人から受け取る給与については、本来の勤務地が国外であるか否かにかかわらず、給与所得として納税が必要となります。その外国法人が日本に事務所等を有していない場合は、国外から支払われる給与は源泉徴収の対象とはなりませんので、ご自身で確定申告を行い納税する必要があります。(その外国法人が日本に事務所等を有している場合は、その日本に所在する事務所等が源泉徴収を行うことになります。)

その後事態が収束し、年の中途で日本から出国をして非居住者となる場合には、その出国までに確定申告を済ますか、納税管理人を定めてその後の税務手続きを委任する必要があります。

 

事例2.従業員を海外で業務に従事させる場合

海外親会社から従業員を受け入れることとなったものの、新型コロナウイルス感染症の世界的拡大に伴う移動制限を踏まえて、当面は海外において業務に従事させることとなった場合、この従業員に対して支払う給与について、日本における税務上の取り扱いはどうなるのでしょうか。

当該従業員は、国内に「住所」を有し、又は、現在まで引き続き1年以上「居所」を有する”居住者”には該当せず税務上非居住者として扱われます。非居住者が日本国内において行う勤務に基因する給与は、国内源泉所得として所得税の課税対象となりますが、非居住者に対して国外における勤務に基因する給与を支払う場合は、所得税の課税対象とならず、この従業員に対して支払う給与については源泉徴収を行う必要はありません。

ただし、海外親会社の従業員等を国内子会社の役員として受け入れる場合には、その取扱いが異なる場合があります。非居住者である内国法人の役員がその法人から受ける報酬は、その役員が、その内国法人の使用人として常時勤務を行う場合(海外支店の長等として常時その支店に勤務するような場合)を除き、全て国内源泉所得となります)。したがって、非居住者である役員に対して支払う報酬については、一定の場合を除き国内源泉所得として所得税の課税対象となり、その支払の際に20.42%の税率により源泉徴収が必要となります。

 

事例3. 一時出国していた従業員を日本に帰国させない場合

従業員を海外現地法人に派遣(3か月)してきましたが、今般の新型コロナウイルス感染症の世界的拡大に伴う移動制限を踏まえて、派遣期間が終了した後も当分の間、引き続き現地において業務に従事させています。この従業員には、派遣元の国内企業より給与を支払い源泉徴収していますが、派遣期間の延長に伴う変更点はあるのでしょうか。なお、この従業員は通常は日本国内で家族と暮らしており、帰国後も同様です。

この従業員は一時的に海外に滞在していますが、国内に住所を有していると認められるため、居住者に該当します。したがって、居住者に対して支払う給与はこれまでと同様に所得税を源泉徴収する必要があります。

 

以上3つの事例を紹介しましたが、いかがでしたでしょうか。国境をまたぐ取引は意外な盲点があり処理を誤りがちですので、ご参考にしていただけますと幸いです!